Vol.21 ハルキスト募集中
- koyamaseminar
- 2020年12月5日
- 読了時間: 5分
みなさん初めまして。内ゼミ代のさかのです。
突然ですが、私はハルキストです。
ハルキストとは村上春樹の作品を熱狂的に愛する人たちのことを言います。
私が村上春樹の小説に出会ったのは中学3年生の時です。
旅行の前日に、道中で暇つぶしに読める本が欲しいと思って購入したのがきっかけでした。
確か『海辺のカフカ』だったと思うのですが、読み始めると止まらなくなり、結局旅先で3周ぐらい読みました。そのせいで旅先の記憶がほとんどありません。
それ以降、私は村上春樹の小説に魅了されてしまいました。他の小説家のものと違って何度読んでも飽きません。当時、私の家にはスマホもテレビもなかったので時間があり余っており、貪るように読んでいました。
高2の時なんか、学校に行くふりをして3時間ほど電車で『1Q84』を読んだあと、昼から登校するなんてことが何回かありました。当時は勉強を中心として何もかもがうまくいかず、魅惑的な村上ワールドに逃げ込んでいたのです。
もちろん今でも村上春樹が好きで、『ノルウェイの森』を英語で読んでみたり、村上春樹が翻訳した本を好んで読んだりしています。
どうしてそんなに魅了されるのか。今日は村上春樹作品の良さをいくつかお話しします。

1 表現が面白い
次の文章は、秋の草原を描写したものです。
「僕はあの草原をはっきり思いだすことができる。何日かつづいたやわらかな雨に夏のあいだのほこりをすっかり洗い流された山肌は深く鮮やかな青みをたたえ、十月の風はすすきの穂をあちこちで揺らせ、細長い雲が凍りつくような青い天頂にぴたりとはりついていた。(『ノルウェイの森 上』(講談社文庫)9頁)」
なんだかとても綺麗だと思いませんか。情景が頭にありありと浮かぶ気がします。
次の表現も素敵です。
「『うかがいたいことがあるんだけど』と女性のひとりがやってきて言う。背の高いほうだ。声のトーンは硬くこわばっていて、戸棚の奥に忘れさられていたパンを連想させる。(『海辺のカフカ 上』(新潮文庫)368頁)」
どんな声やねんって思います。でも、聞いていると喉がつかえてしまいそうな、そんな声の雰囲気が伝わってくるような感じがします。
村上春樹の小説には以上のような面白い表現が散りばめられています。「むず痒い」「しんどい」と思う人もいるみたいですが、私自身は一文一文がスッとお腹に降りてくる感じがして心地がよいなと思います。
2 登場人物の発言がしみる
村上春樹には風変わりな人物がたくさん登場します。そして彼らの発言の中にはハッとさせられるようなものが多々あります。
例えば、
「目を閉じちゃいけない。目を閉じても、ものごとはちっとも良くならない。目を閉じて何かが消えるわけじゃないんだ。それどころか、次に目を開けたときにはものごとはもっと悪くなっている。私たちはそういう世界に住んでいるんだよ、ナカタさん。しっかりと目を開けるんだ。(『海辺のカフカ 上』(新潮文庫)310頁)」
これは、男が猫のお腹を掻っ捌いてその内臓を食べてしまうというおぞましいシーンでの一言です。ハッとさせられます。
次のやつもシビれます。
「あなたはそもそも最初からちょっと間違った考え方をしていたような気がするの。ねえ、ねじまき鳥さん、あなたが今言ったようなことは誰にもできないんじゃないかな。『さあこれから新しい世界を作ろう』とか『さあこれから新しい自分を作ろう』とかいうようなことはね。私はそう思うな。自分ではうまくやれた、別の自分になれたと思っていても、そのうわべの下にはもとのあなたがちゃんといるし、何かあればそれが『こんにちは』って顔を出すのよ。あなたはそれがわかっていないんじゃない。あなたはよそで作られたものなのよ。そして自分を作り替えようとするあなたのつもりだって、それもどこかよそで作られたものなの。(『ねじまき鳥クロニクル 第2部予言する鳥編』(新潮文庫)200頁)」
井戸の底に閉じこもった主人公に少女が放った痛烈な一言です。読者にとってももしかすると耳の痛む言葉かもしれません。
村上春樹の小説がどのような哲学や思想のもとで書かれているのか。私は勉強不足でそれを正確には理解できていません。しかし、いずれ必ずその奥に潜む「根源的な何か」を理解したいと思っています。
3 音楽のようにリズミカル
村上春樹の小説は「読む」というより「流れる」というイメージが私の中であります。一度文章の上に目を落とすとその流れが途切れるまで顔を上げることができません。まるでレコードの針のようだな思います。これはまさに村上春樹の文章力のなせる技なのでしょう。彼自身も次のように言っています。
「僕は楽器を演奏できません。少なくとも人に聞かせられるほどにはできません。でも音楽を演奏したいという気持ちだけは強くあります。だったら音楽を演奏するように文章を書けばいいんだというのが、僕の最初の考えでした。そしてその気持ちは今でもまだそのまま続いています。こうしてキーボードを叩きながら、僕はいつもそこに正しいリズムを求め、相応しい響と音色を探っています。それは僕の文章にとって、変わることのない大事な要素になっています。(『職業としての小説家』(新潮文庫)136頁)」
これに関しては小説の中の具体例を挙げるのが難しいです。ぜひ一度彼の小説を読んでみてください。きっとみなさんも彼の「音楽」に引き込まれていくはずです。
長くなってしまって申し訳ありません。最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
同期のブログを見ていると「この人にこんな趣味があったのか」とか「深い考えをもっているんだな」とか発見がたくさんあり、入ゼミから一年が経ってもその多様性に驚かされます。そういう驚きがあるたびに本当に小山ゼミに入ってよかったなと思います。
このブログを読んでいて、かつ入ゼミを迷っている方がもしいれば、私は自信を持って小山ゼミを勧めたいです。
そして晴れて小山ゼミに入られた皆さんとは、ぜひ村上春樹や他の小説家について語り合えたらいいなと思います笑
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